NONIO ART WAVE AWARDに戻る
presented by LION

NONIO ARTWAVE AWARD2019

結果発表

3年目を迎えたNONIO ART WAVE
AWARD 2021。
ペインティング、グラフィック・イラスト
レーション、写真という3つの部門を設け、
日本全国の若手アーティストによる308応募
/885作品が集まりました。

本年も3つの部門に精通した審査員を迎え、
厳選なる審査により
各部門グランプリ3名・
審査員特別賞5名のほか、
今年新設され
NONIOの限定パッケージとして商品化される
NONIO賞の3名(内、グランプリとの
W受賞2名)という合計9名の若手アーティストの
作品が選ばれました。

各部門のNONIO賞作品は限定パッケージとして商品化されました。

3つの部門

ペインティング部門
油絵、水彩画、アクリル画、版画など画材・手法を問わず、自由に表現された平面作品。
グラフィック・イラストレーション部門
グラフィックデザイン、イラストレーション、タイポグラフィなど、絵・図・文字・記号・画像などを用いて表現された作品。
写真部門
カメラを介して写し撮ったあらゆる写真作品。

グランプリGRAND PRIXペインティング部門

呼び継ぎ(それぞれの土の温度)
コンセプト概要

「さまざまな要素をもった別々の絵画を、ひとつの絵画という うつわ に仕立てる」というコンセプトのもと、継続して発表しているシリーズのひとつとして制作した作品。

root
コンセプト概要

良く晴れた日にふと目に止まった神社の御神木が、真っ青な空に切り取られたように見え、そのさまが現実とは思えないほど神秘的だったことから着想を得た作品。

鮫島ゆい

プロフィール

美術家。1988年京都府生まれ。『みえるものとみえざるものをつなぐこと』をテーマに、絵画表現を中心とした美術作品の制作、発表を行う。視覚だけでは捉えきれないものを、小さな立体物を制作することで触覚を通じて把握し、そこから拡張していくイメージを絵画として構築する手法を用いて制作している。

コメント

この度は、グランプリとNONIO賞という大変名誉な賞をいただきありがとうございます。植物と地層という土着的なモチーフを、NONIOの爽やかなイメージを壊さないようはっきりとした色面構成で表現しました。手に取ってくださる方々の洗面台が、いつもと少し違った風景に見えてくれれば嬉しいです。

岩渕貞哉

描かれたイメージが捕捉されないよう、複数の視点や複数のレイヤーをいかに共存させるかという問題意識のもと、複雑な画面を構成していくための「依り代」や「架空」といった方法論がだんだんと確立されているように感じました。なにを見ているのか一瞬わからなくなる瞬間が好きです。

木村絵理子

具象的に描き込まれた画面と抽象的な色面とが大胆に構成されて、錯視的な奥行き感を生み出しています。ここで発表された2点はいずれも四角いカンヴァスですが、カンヴァス自体が不定形であったり、複数の不定形のカンヴァスを組み合わせたりと、かつて20世紀初頭に抽象絵画が誕生した時に多くの画家たちが挑戦したような、絵画の固定概念からいかに解放されるかを希求しようとする様子がうかがえます。

名和晃平

鮫島ゆいは、自身の世代が持っている新しい感覚で、従来の絵画表現を更新しようとしている。単に目に見えるものを絵画化したり、画面の中のみで表現を探ったりするのではなく、実在する自作のオブジェクトとそれを取り巻く空間を、絵のなかに取り込み、絵の具そのものが持つ色彩と筆触へと還元する。そこに独自のアプローチや面白さがあると感じた。

服部一成

まずは大胆な画面構成と色彩が魅力的だと思いました、そして細部を見ていくと思わぬ発見があり、モチーフの意外な組み合わせが楽しいような、しかし見れば見るほど謎が深まるようなところもあり、長く見飽きることのない作品だと思いました。筆のタッチもとても印象に残ります。

長島有里枝

まず、作品の不思議な第一印象に強く惹かれました。近づいて眺めると、ディテールのひとつひとつがとても魅力的であるとともに、絵の中に存在するかたちのユニークさがいったいどこからくるのだろうと考えさせられました。「みえざるもの」に触れるためのオブジェクトをいったん作り、それをさらに描くというプロセスがとても興味深いし、面白いと思いました。

グランプリGRAND PRIXグラフィック・
イラストレーション部門

まぶた、残像
コンセプト概要

過ぎ去っていく日常は平凡で他愛もない。けれど、見逃してはならない瞬間の連なりだと思う。瞬きは、その瞬間を噛み締めている行為かもしれない。曖昧なものごとを一つひとつ取り上げ、味わうことで、実感を持って毎日を生きられるだろう。

つぶになる
コンセプト概要

細胞や体から発している熱、自分自身が知らない間に生まれ変わったり、役目を終えたり蒸発したりしているものを描きたくて制作した。さっきまで私の一部であったものが「もの」になる瞬間に違和感を感じ、自分の存在の曖昧さを実感する。

前田あいみ(アマエタ)

プロフィール

1989年鳥取県生まれ、関西在住。京都嵯峨芸術大学(現・嵯峨美術大学)造形学科卒業後、女子美術大学大学院美術研究科修了。日々感じた些細なものごとを銅版画、シルクスクリーン、ドローイングで制作し、個展やグループ展で発表をする他、化粧品や菓子、雑誌などのイラストを手がける等活動をしている。

コメント

今まで「日常」や「自分」をキーワードに制作してきたので、「ひらけ、自分」というテーマと共に、NONIOのパッケージとなり、知らない誰かの日常の一部となることに不思議な感覚と喜びを感じます。知らない誰かと一緒に生きている実感がするからです。貴重な経験をさせていただき、ありがとうございます。

岩渕貞哉

自分という存在がいかに可塑的なものなのか、身体や感情も周囲の環境に開かれていて、うつろいやすいものであるのか。それを日々の暮らしの中で、繊細に感取しようとする、その記録を定着させようとして描かれた作品は、なぞるように観る者の身体にも届いています。

木村絵理子

表面をこそぎ落とすような荒々しい筆触や、硬質な描線。銅版画という技法特有のニュアンスを活かしながら、自由にイマジネーションを拡げて制作している様子がうかがえる作品です。描かれているのは、人の頭部であったり、足や手のように見える部位など、断片的な人体のモチーフですが、執拗にたくさんの指を繰り返し描いたりする様子には、モチーフに対して意味を求めるのではなく、反復のリズムなど音楽的な魅力を感じさせます。

名和晃平

前田あいみは、繊細な感覚を銅版画の中に刻んでいく。ひとつひとつの要素は彼女の個人的な(日記的な)感覚だが、様々な事柄が画面の中に点在し同居することで、「気配」を感じさせる。彼女の心の中を覗くような、ひそかなリアリティを帯びた作品だ。身体/意識/心の境界が曖昧になっているような表現で、作家自らがセルフカウンセリングする方法のようにも見える。

服部一成

激しいタッチの「まぶた、残像」と、繊細な「つぶになる」、印象の異なる2作品それぞれに魅力があり、実際に審査でも両方に票が入りました。僕は特に「つぶになる」のほうに惹かれました。銅版画特有の線の質感を生かしたフラジャイルな美しさの中に、何本も続く指のイメージなど、身体の存在のあやうさが思い起こされて、不安なようで心地良いような、見ていてこちらも細かく揺れていく感覚があります。

長島有里枝

自分と外の世界、あるいは自分の中にある自分ではないかもしれない部分についての考察を行なっているのでしょうか。その思考の面白さや切実さが、版画となってそこに魅力的に立ち現れていると感じました。作者が持っている、生まれたての赤ん坊が他者(「自分」と思えるもの以外のすべて)との関係性を生まれて初めて、全知覚を駆使して探っているようなイメージが、繊細なのに大胆でもあるような筆致から伝わってくるようでした。

グランプリGRAND PRIX写真部門

NUKEGARA_20201210
NUKEGARA_20201123
コンセプト概要

一日の終わりにその日着ていた服を脱ぐ、その日常的な行為に人は意味を問うことはありません。しかし、私はこの些細な行為により脱ぎ捨てられた衣服に自分自身の一部を剥ぎ取ったような(ある種ヌケガラのような)儚さを感じます。その自身の一部分を記録することで自身が存在していたことの意味を問う作品です。

井上結理

プロフィール

1985年生まれ。京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程修了。主に、日常生活の中から一場面を抽出する事で生きていることについて考察し作品へと繋げている。人であるということが確認できる場所を表現することで、「自分」に向き合うことの重要性を意識した作品展開をしている。

コメント

自分の生きている証(痕跡)を追求することで、NUKEGARAという作品が生まれました。この賞を頂くことで、より多くの人達に「存在している」「生きている」というメッセージが伝わることを願い、今後の制作活動の糧にしていきたいです。

岩渕貞哉

写真一枚だけではただの記録でしかないけれど、それが積み重なっていくことで表現に重心が移っていく。その「抜け殻」と日付にはその日、井上個人やこの世界で何が起こったのかは伝えてはくれないけれど、確実にその痕跡や予兆は映し出されているはずだ。

木村絵理子

仕分けもせずに脱ぎ捨てたままの衣服。そういうだらしない日常のある一瞬を捉えたように見えますが、注意深く見ると、実際には照明などもきちんとセッティングされた状況で撮影された写真であることがわかってきます。また、それを毎日継続して発信するパフォーマンスとしての意味と、下着に注目しない限りジェンダーも曖昧な日常のリアリティ、コンセプトと手法、そして完成したビジュアルの魅力とが見事に合致した作品だと思います。

名和晃平

井上結理の作品は、写真でありながらパフォーマンス的な要素も持ち合わせている。毎日の衣服を床に脱ぎ捨て、撮影するという、本人が不在の「セルフポートレイト」は、コロナ渦の都市が持つ、不在、閉塞、制限、という特殊なムードを匂わせる。脱いだ服をインスタグラムで共有するという、アーティストの行為そのものが、間接的な「解放」として、人々の共感を呼んだのではないだろうか。

服部一成

その日に着ていた服を脱ぎ捨てて写真に撮る、というコンセプト自体はシンプルですが、実際に毎日続けることで、結果は実に興味深くなっています。被写体から何かを強く訴えかけてくるというより、じっと無言で動かない被写体を見てこちらが自然に考えを巡らせてしまうという感じで、そこが魅力だし作品の強さだと思いました。

長島有里枝

一日身に着けたものを脱ぐ、という行為は誰にとっても馴染みあるものですが、日々記録することでその行為は日常から切り離され、異質なアーカイブとしての魅力を宿します。一点ずつ眺めると、季節や服の好みはもちろん、その日の体調や気分、行動パターンなど、作者の「生活」そのものが見えてきます。写真に添えられたタイトル(日付とその日のニュース)は、わたしたちの日常が時代のうねりと並走していることに改めて気づかせてくれもします。

審査員特別賞JUDGE'S CHOICE

岩渕貞哉賞

迷子の風景No.120

生きてる植物と写真の風景を構成し描く。互いに絡み、打ち消し合いながら形成される風景。繰り返すリズム、色彩は意識を記憶や空想へと導き、精神は今この場所でどこか遠くを彷徨う迷子になる。

長谷川彩織

1992年 埼玉県生まれ
2016年 多摩美術大学 大学院(博士前期課程 美術研究科 絵画専攻)修了
2017年 「HasegawaSaori solo Exhibition」GalleryLVS(韓国)
2020年  Arte Laguna Prize 14 ファイナリスト (ベネチア)

コメント

ポートフォリオ、現物審査で作品を観て頂いた上で審査員特別賞を頂けたこと、大変嬉しく光栄に思っております。賞を励みに今後も作品制作と展示の活動を続けて日々、大切に生活していきたいと思います。この度は本当にありがとうございました。

岩渕貞哉

とくに見るところもないような郊外の住宅地の風景。その退屈さや不穏さだけにとどまらず、眼前に草花を介入させることで、水面に移った景色を見ているとそこが別世界への入り口に思えてくるというような、浮遊する感覚が個人的に好きでした。

木村絵理子賞

Untitled

花や草木を主なモチーフに、油絵具や布といった画面を構成する要素を慎重に選択・配置して描く。布や絵具の塊による素材の群生は素材と図像を変容し合い、草花が群生している庭の光景を創出する。

藤本純輝

1997年 三重県生まれ。2021年京都芸術大学大学院芸術研究科修士課程芸術専攻 美術工芸領域油画分野 修了。
2021年「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2021 Akatsuki ART AWARD」にて優秀賞を受賞。

コメント

正解はなく不安な道の中、ただ自分にできることをひたすら突き詰めてきたものに対して、受賞という形で応援いただけましたこと大変嬉しく感じます。今回の結果を大切に記憶し、これからもより一層自身の芸術を追求していきたいと思います。

木村絵理子

事実上、2つの絵画を重ねあわせたように、支持体としてのカンヴァスと、その上に貼り重ねた裂け目のあるカンヴァス、そして2面それぞれに塗られた絵具層がレイヤーになっています。絵具によって描き出されたイリュージョンとしての空間と、実体ある画布の重なり合いによる奥行きとが、代わる代わる目に飛び込んできて、画像だけを見ていたのではなかなか気づけない、実物を見ることの面白さを示す作品です。

名和晃平賞

self portrait #41

鏡に映ったものも、写真で撮影したものも再現(re-presentation)の像であり、それ自体ではない。自身が映らない鏡を被写体に自身が写らないセルフポートレートを撮影した。

井村一登

1990年京都府生まれ。2017年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻を修了。
ハーフミラー、球体鏡、LEDなどを用いて視覚や認識にかかわる光学的作品を制作する。近年は鏡の歴史とルッキズムについて研究し、鏡の素材、技法を分解、再構成し「自分が映らない」鏡を制作している。

コメント

鏡を使用した制作は8年になりますが、鏡自体を制作することは初の試みでした。タイトル通り、自身のセルフポートレートが受賞したことは作家としてはもちろん、個人としてもとても誇らしいです。

名和晃平

井村一登は、大学の学部時代からコンスタントに制作を続け、素材や技法についても独自の探究をしている。今回の写真はガラスの塊の外側を鏡にして、その内側を覗くという体験を作品化している。これを”セルフポートレイト”と呼ぶのは、ひとつの思考実験として、彫刻的なアプローチが写真へと昇華された良い例だと言える。

服部一成賞

人間は「筒」のようだ。食べ物を上から入れて下から出して。その繰り返しで生命を維持している。そんな「筒」を色々な角度から見てみると刻々と異なる姿を表す。言わずもがな人間も見方によって様々な姿を表す。

佐塚真啓

静岡生まれ。丑年。おうし座。長男。A型。右利き。中高は丘の上の男子校。チャリ通。05武蔵野美術大学入学、上京。09ムサビ卒業。11青梅市に移住。12「国立奥多摩美術館」企画。18「奥多摩美術研究所」設立、所長になる。1日8時間の睡眠を心掛けている。冬はガタガタ震え、夏はダラダラ汗をかき過ごしている。

コメント

うれしいです。とってもうれしいです。本当にうれしいな。うれしいのです。いやいや「うれしい」を連呼すると嘘みたいだけど、本当にうれしいのです。うれしい時うれしい事を、どういう言葉にしたら伝えられるのかな。よく伝えにくい事は、何かに例えたりするよね。いやいや、やっぱりここは簡潔に「うれしいです!」かな。

服部一成

モチーフもフォルムもタッチもユニークな作品ですが、応募の2点だけだと、なんとも人を食ったようなところもあるこの作品をどう見ればいいのか、ちょっと戸惑いました。ポートフォリオを見ると、すべての作品からコメントなど言葉の扱いに至るまで、一貫した姿勢が徹底していて、人生全体を芸術に捧げているような凄みとおかしみがあり、この全身芸術家ぶりが素晴らしいと思いました。

長島有里枝賞

スフ

ひたすらに線を引く行為を繰り返し、その反復した行動のなかで生じる線のズレや絵具溜まりなどの痕跡を残す。

井上七海

愛知県生まれ。京都芸術⼤学⼤学院修⼠課程 美術⼯芸領域油画分野修了。同大学院修了展 優秀賞。最近のグループ展示に、2021年「DAWN-EXPOSITION 2021.04-」銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUM、2020年「S-2Ds」ex-chamber museumなど。

コメント

この度は、審査員特別賞に選定して頂き誠にありがとうございます。とても嬉しいです。これを励みにこれからも精進したいと思います。

長島有里枝

繰り返し引かれる線は、均一さを目標としても必ずずれます。通常は機械がおこなうことを、作家が手作業でおこなっている本作には、いつまで眺めても見飽きないほどの新しい魅力が備わっています。本作は、身体についての考察でもあります。進歩や進化をよしとする価値基準のなかでは限界と解釈されがちな身体性が、本作最大の魅力のひとつです。思い通りにならないことは「救い」でもあるのではないかという問いを、鑑賞者に投げかけているかのようです。

NONIO賞NONIO'S CHOICE

ペインティング部門
呼び継ぎ (それぞれの土の温度)
コンセプト概要

「さまざまな要素をもった別々の絵画を、ひとつの絵画という うつわ に仕立てる」というコンセプトのもと、継続して発表しているシリーズのひとつとして制作した作品。

鮫島ゆい

プロフィール

美術家。1988年京都府生まれ。『みえるものとみえざるものをつなぐこと』をテーマに、絵画表現を中心とした美術作品の制作、発表を行う。視覚だけでは捉えきれないものを、小さな立体物を制作することで触覚を通じて把握し、そこから拡張していくイメージを絵画として構築する手法を用いて制作している。

コメント

この度は、グランプリとNONIO賞という大変名誉な賞をいただきありがとうございます。植物と地層という土着的なモチーフを、NONIOの爽やかなイメージを壊さないようはっきりとした色面構成で表現しました。手に取ってくださる方々の洗面台が、いつもと少し違った風景に見えてくれれば嬉しいです。

グラフィック・
イラストレーション部門
まぶた、残像
コンセプト概要

過ぎ去っていく日常は平凡で他愛もない。けれど、見逃してはならない瞬間の連なりだと思う。瞬きは、その瞬間を噛み締めている行為かもしれない。曖昧なものごとを一つひとつ取り上げ、味わうことで、実感を持って毎日を生きられるだろう。

つぶになる
コンセプト概要

細胞や体から発している熱、自分自身が知らない間に生まれ変わったり、役目を終えたり蒸発したりしているものを描きたくて制作した。さっきまで私の一部であったものが「もの」になる瞬間に違和感を感じ、自分の存在の曖昧さを実感する。

前田あいみ(アマエタ)

プロフィール

1989年鳥取県生まれ、関西在住。 京都嵯峨芸術大学(現・嵯峨美術大学)造形学科卒業後、女子美術大学大学院美術研究科修了。日々感じた些細なものごとを銅版画、シルクスクリーン、ドローイングで制作し、個展やグループ展で発表をする他、化粧品や菓子、雑誌などのイラストを手がける等活動をしている。

コメント

今まで「日常」や「自分」をキーワードに制作してきたので、「ひらけ、自分」というテーマと共に、NONIOのパッケージとなり、知らない誰かの日常の一部となることに不思議な感覚と喜びを感じます。知らない誰かと一緒に生きている実感がするからです。貴重な経験をさせていただき、ありがとうございます。

写真部門
雨の隙間
雨の反転
コンセプト概要

部屋の窓から天気雨を見ている時。秋、寝ぼけている時に春の匂いを感じる時。いずれも私にとってほのかに明るい、先が広がっていくような感覚と結びついています。この作品が、私を支えるこの小さな明かりのように、私以外の誰かの視線の少し先を照らすことができたらと思い制作しました。

春風

プロフィール

1998年生まれ。2020年武蔵野美術大学卒業。
写真の中の世界と鑑賞者の間の境界をより不確かにする試みとして、布と写真を組み合わせた作品の制作を進めている。夢から覚めるほんの一瞬、目を開ける前の景色を思い出すように写真を撮りたい。

コメント

朝目覚めた時、気持ちを入れ換えたい時、新鮮な空気を胸に吸い込みます。私は自分の作品が、日々の深呼吸の代わりとなるように、誰かのそばに寄り添うものになることを願って制作してきました。NONIOを毎日使う方々の気持ちが、たとえば気持ちの良い風に当たった時のように明るくひらけたものになるのなら、これほど嬉しいことはありません。

岩渕貞哉

逃げ水のような現実のあわいを、どうにかして掴み取りたいという思いを見ました。それは五感からの情報を頭の中でもう一度、組織化して初めて感得できるようなもので、それをさらに他者と共有するために、この表現があるのだと思うので頑張ってほしいです。

木村絵理子

写真がある一つの色味を帯びているということは、例えばアルバムに長く貼られていた写真が赤くなっていくように、時間というものを顕在化させます。では青味を帯びたこの写真からはどのような意味が読み取れるでしょう。タイトルで言及される「雨」というモチーフに引き付けて考えることも可能ですが、例えば、物事の未来予測としての青写真、そうしたこの先訪れるかもしれない時間の存在を示唆するようにも受け取れる、想像を膨らませる作品です。

名和晃平

春風の今回の写真は、朝目が覚めたときに感じるペールブルーの色が美しく表現されている。天気や温度、その時の生活と街の雰囲気を想像させる写真だ。アブストラクトな絵画のような構図と色彩は、グラフィックの要素とドローイングの要素が相まって、心地よく感じる。

服部一成

光の皮膜のような表情を捉えた写真が心地よい。具象と抽象の中間にあるような表現で、すべてがあいまいに溶けていく感覚が魅力です。このような表現は類型的になりそうなところですが、そうならないのはフレーミングなどの感覚が鋭いのだと思います。作者のこの感覚で、違う表現、例えばもっと具象的な表現をやってみても、良さそうだと思います。

長島有里枝

淡いブルーの写真はどちらもきらめいたり、揺らめいたりするオブジェクトによって画面構成されています。鏡面や水を彷彿とさせるイメージは、「天気雨」や「秋(略)に感じる春の匂い」など、ものごとの相反する側面を彷彿とさせる言葉で説明されます。ブルーは憂鬱さを表す言葉でもあり、家の中で撮影されたと思われる作品は昨年から続くコロナの状況を、ポジティブに捉え直したもののようにも見えます。心地よさに溢れる画面からは、「誰かのほんの少し先を照ら」したいという作家の強い意思が感じられます。

ライオン株式会社

NONIO賞の選定については1次審査で賞候補にあげられた作品の中から、気持ちの通うコミュニケーション「ひらけ、自分。」というをテーマへの取り組みと、NONIOブランドのデザインポリシーにフィットする作品を選ばせていただきました。それぞれの作品に表現されている作者の思いが、商品パッケージとして再構成されることで、たくさんの方々に共感され、新たなコミュニケーションが生まれる事を願っています。

審査員

  • 岩渕貞哉

    岩渕貞哉(『美術手帖』総編集長)

    岩渕貞哉(『美術手帖』総編集長)

    1975年横浜市生まれ。1999年慶応義塾大学経済学部卒業。 2008年より『美術手帖』編集長、昨年より総編集長、美術出版社取締役に就任。同時に同誌が運営するアートECサイト「OIL by美術手帖」立ち上げに携わる。現在は、現代アートのビジネスソリューションにも力を注ぐ。

    https://bijutsutecho.com/

  • 木村絵理子

    木村絵理子(キュレーター/横浜美術館主任学芸員)

    木村絵理子(キュレーター/横浜美術館主任学芸員)

    2000年より同館勤務、現代美術の展覧会を中心に企画。また2005年よりヨコハマトリエンナーレを担当、2020年展企画統括。横浜美術館での主な企画展に、「BODY/PLAY/POLITICS」展(2016年)、「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術」展(2013年、シンガポール美術館との共同企画)をはじめ、奈良美智展(2012年)、高嶺格展(2011年)、束芋展(2009-10年)など。

    https://yokohama.art.museum/

  • 名和晃平

    名和晃平(彫刻家)

    名和晃平(彫刻家)

    1975年生まれ。京都を拠点に活動。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年、京都に創作のためのプラットフォーム「Sandwich」を立ち上げる。独自の「PixCell」という概念を軸に、様々な素材とテクノロジーを駆使し、彫刻の新たな可能性を拡げている。 近年は建築や舞台のプロジェクト にも取り組み、空間とアートを同時に生み出している。

    http://sandwich-cpca.net

  • 服部一成

    服部一成(グラフィックデザイナー)

    服部一成(グラフィックデザイナー)

    1964年東京生まれ。主な仕事に、「キユーピーハーフ」などの広告や雑誌『流行通信』『here and there』『真夜中』のアートディレクション、「三菱一号館美術館」「弘前れんが倉庫美術館」のロゴタイプ、「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」「原田治展 『かわいいの発見』」などの告知物や図録のデザイン、ロックバンド「くるり」のアートワークなど。

  • 長島有里枝

    長島有里枝(写真家)

    長島有里枝(写真家)

    1993年、武蔵野美術大学在学中に「アーバナート#2」でパルコ賞を受賞しデビュー。写真、インスタレーション、文章を用いた作品を制作。1999年、カリフォルニア芸術大学MFA修了。2001年、第26回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年、第26回講談社エッセイ賞受賞。2015年、武蔵大学社会学部前期博士課程修了。作品集に『Self-Portraits』(Dashwood Books 2020)など、著書に『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』(大福書林 2020)などがある。

    https://www.mahokubota.com/ja/

最終審査会の様子

NONIO ART WAVE AWARD 2021

総括

これまでとおり、受賞となった作品にはハイレベルなものや将来を期待されるアーティストを多く選ぶことができたと思います。ただ、全体としては、作品のサイズが小さめで少しおとなしいような印象を受けました。コロナ禍のなか、若いアーティストは今後の活動について葛藤する場面も多かったと思います。このコンペがその突破口の一つになることを願っています。

『美術手帖』総編集長/美術出版社取締役
岩渕貞哉